江戸時代末期から昭和にかけて、松代寺町で質屋などを営んでいた寺町商家(旧金箱家住宅)。敷地内には明治から大正までの商家の営みを伝える歴史的建造物群と、松代の特徴である泉水を備えた庭園が現存しており、商家の豊かな暮らしぶりを伝える貴重な資料として平成24(2012)年に市の有形文化財に指定された。それに先立ち、長野市は文化財的価値を高めつつ建物を有効利用する方法を探るため、平成22(2010)年度に住民を絡めた4回のワークショップを実施。それにより地域の住民がシェフとなり、日替わりで地元食材を生かした食事を提供する「ワンデイシェフ・レストラン」としての活用が決まり、平成27年(2015)年から本格スタートした。現在は6組のグループがシェフを務めており、それぞれに工夫を凝らした食事を提供している。
この仕組みを支えているのは、平成13(2001)年から松代の歴史文化を生かしたまちづくりに取り組んできたNPO法人「夢空間 松代のまちと心を育てる会」。スタート前にはシェフ希望者に練習の場を提供し、今は寺町商家のスタッフがその日のランチと喫茶を提供している。レストラン利用者の年齢層は幅広く、常連も多い。松代のまちのレストランとしてすっかり定着したこの仕組みにより、文化財としての寺町商家の魅力も広く知られるようになった。
この日のワンデイシェフは毎回人気の「こめる食堂」。地域おこし協力隊・大島誠子さんのグループで、毎回、小麦粉・卵・乳製品・白砂糖は使わず、お米や米粉をテーマにしたランチを提供。この日のメニューは「彩り野菜寿司」。なお、寺町商家の蔵はギャラリーやイベントスペースとしても活用されている。
寺町商家(旧金箱家住宅)
長野市松代町松代寺町1226‐2
TEL 026-214-5013
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意識しているのは、若い人材の育成
NPO法人「夢空間 松代のまちと心を育てる会」
事務局長 三田今朝光さん寺町商家のスタッフは30~40代の子育て世代が中心で、シェフも若い世代がたくさんいます。ここで若い人の育成を考えています。
最近、松代の若者たちはみんな、努力をしながら試行錯誤をしているから面白いですね。だから、年配の人も若い人も、お互いに関わりをもって広がりをつくっていけたらいいと思っています。そういう意味では、私たち「夢空間 松代のまちと心を育てる会」もまだまだ試行錯誤の連続ですね。